第９話

甲斐です。自分酔拳絶好調！（爆死）


「（うわああああ！）大神官様だーっ！大神官様が戻られたぞーっ！！」
「おお、おお！フォズ様！よくぞ、よくぞご無事で！」
「フォズ様…おやつれになられて…おのれ魔族どもめ！！」

「ほぉう、凄い人気だな。…ま、分かるがね…ん？フォズ様？」
「…すみません、皆の姿を見たら、つい…いけませんね、ここは笑顔でないと」
「ふむ。……フォズ様はお疲れだ！道を空けよ、ダーマの民よ！」
「アルス！遅かったな！フォズ様もさぞお疲れでしょう、こちらへ…（アルス、ちょいと問題が起きた）」
「（…わかった）…まずは、フォズ様を館へ！」

「…ザジが戻って神官長が消えた？」
「ああ、それだけじゃない。村を見張っていた連中が全員消えてる」
「フォズ様が戻ったところで、一気に仕掛けてくる気か？…なんにせよ時間がない、って事にはかわりはないか。」
「大神官様には、ゆっくり休んでもらいたかったが…大神官様は？」
「今、マリベルと一緒に、湯を使ってる。……覗いたら死ぬぞ？フーラル。」
「安心しなって、俺は不死身の男なんだよ」
「…覗くか、見つかるの部分を否定しろよ盗賊。…で、カシムよ、お前の顔色が優れないのは、ザジか？」
「まあ…ちょっと来てくれ」

「…（ぶつぶつぶつぶつ）」
「あーら、勇者様ご一行じゃーん！なによ、雁首そろえて？」
「……誰だお前？」
「何寝たことカマシてんのよ。ネリスに決まってんでしょ？」
「…体のほうはいいのか？」
「はぁ？ご覧の通りピンピンしてるわよ」
「…ニセモノだ。殺すぞ、いいなカシム？」
「まあまあ、待てアルス。（操られてるだけと言う可能性が否定しきれん）な？」
「（そりゃ無いと思うが…）で、こっちはどうしたんだ？ぶつぶつと」
「…姉さんがいない…姉さんがいない…どこ行ったんだよ姉さん…ぶつぶつ」
「ああぁ〜っ！さっぱりしたぁぁ〜！…あん？何してんのみんなで？」
「ちょいとな。…フォズ様、どうやらゆっくりしている暇が無くなったようです」
「…何かあったのですね？」
「監視者どもと、神官長が消えました。…大神官様が助け出されたのを知って、総攻撃をかけてくる腹づもりやも知れません。」
「そうですか…ならば、私達が取るべき道は一つだけ…ですね？」
「やられる前にやる、これしかありませんな。此処で座して死を待つわけにもいかんからな。」
「カシム、皆を集めて下さい。それと、麓の村に使いを。」
「既に、大神官救出の報は流してありますから、散り散りになった親衛隊も追々集結するとは思いますが…」
「仕方ありません。今いる者達だけでも体制を整えて置かなくてはなりませんから」
「さて、それじゃ俺は…」
「風呂に入ってきなさい。いいわねアルス！」
「…やっぱりクサイ？」
「血と汗と埃と地下の黴臭さと毒の沼とゾンビーアイの臭いがするぞ、アルス」
「……オメーも来い、ガボ。」

（ざわざわざわ）
「…で、我らには一刻の猶予もない。このままの勢いで一気に神殿に突入して、敵の頭を潰すしか無いと思いますが、皆の意見はどうか？」
「ま、まて！こんな小勢で、魔物の群になど、死にに行くようなものではないか？兵力がもっと集まってから押し出した方が…」
「それでは、向こうの思うつぼです！此処で時を費やせば、その分此方が不利に…」
「大体、カシム、何故貴様が仕切っておるのだ！ここは神官のあら探しが仕事の貴様なぞより、年上の私が仕切るべきだろうが！」
「皆、その様な事を言っている時ではありません、私としても…」
「いやフォズ様、物事の道理を、しかと正してこそ、規律と言うものですぞ！」
「（がちゃっ）…もう臭くないだろ、ガボ？」
「臭くねーけど、何であんなに湯につかってんだ、アルス？」
「ま…それは、男のサガってもんで。…で、出発の準備は…ありゃ？」
「アルス…私、もうブチ切れそうよ！なんなのよアイツら！！」
「皆の意見が纏まらないのです…カシムは、神官や親衛隊の査定を受け持つ［黒本］の仕事もしていたので、皆の反感が強くて…皆も不安なのでしょう、私の言う事も聞いて貰えず…」
「チッ…やっぱりか。裏の仕事師は表にゃ向かんからな。しょうがねぇ」
「じゃから、年上の私が…！」
『黙りやがれバカヤロウどもッ！！』
「！？」
『何をグダグタ抜かしてやがる！テメェら何で此処にいるんだ？フォズ様を助けて神殿から魔物を追い払うためだろうが、ああ？！』
「そ…その通り！何を当たり前な！」
「だったら、何で此処で文句を付けてやがんだ？…カシムの奴は、独自の調査でフォズ様の居場所を調べ、こうして救出してきた！フォズ様だって、この数ヶ月、あの冷たいバリアの中で、絶望させようとする魔物共の様々な手口にずっと耐えてきた！こんな小さな女の子がだぞ！その時、貴様らは何をしていた？フォズ様が貴様らのために戦っていたとき、大の大人の貴様らは！言ってみろ年上！」
「う…それは…」
「言えないか？…何もしてなかったもんなぁ？だからこそ、此処から先の働きが重要だろうが！今のままなら、功績のでかさでカシムが親衛隊長間違い無しだなぁ？…だが、この後フォズ様をお助けして大活躍したら、さて…？」
「む！むむ、親衛隊長…」
「どうだ貴様ら！貴様らが親衛隊に入ったのは、ダーマをその腕で守るためだろう？今までは機会が無かったかも知れないが、今この時こそ、その熱い思いを遂げる絶好のチャンス！フォズ様を…ダーマを守って見せろ！奪われたのなら取り戻せばいい！初心に帰って思い出せ！本当にするべき事は何かを！！」
「そうだ！アンタの言うとおりだぜ！…俺はやるぜ！！一から修行のし直しだ！」
「お…おうとも！この命に替えても大神官様をお守りいたす！」
『馬鹿野郎！命に替えてどうすんだ！…いいか、この戦いで最後じゃねぇぞ？魔物をブチのめした後も、フォズ様を助けてダーマを再建するって役目があるだろうが！それに、フォズ様はもう誰にも死んで欲しくなど無いんだよ！死んでも守るなど、自己満足でしかない！単なる放棄だ！大事な物なら最後まで守り抜け！生き残ってこそ本当の勝利だ！」
「（うおおおおおおおっ！）」
「さて、ではフォズ様…（ごにょごにょ）」
「（…！…はい。）それでは、この後すぐに、アルスさん達とカシムに神殿へ先行してもらいます。残りの者達は私と共に本隊として、準備が整い次第出発します宜しいですね？」
『はっ！』
「いいな野郎共！フォズ様が安心して、ゆっくりお風呂に入っていられるダーマを取り戻すぞ！」
「わっ、わわっ！どうしてそんなこと言っちゃうんですかー！」
「（どっ！）はっはっは！よし、それでは解散！」

「ほい、サクラご苦労さん、フーラル」
「ひゃはは、お役に立てたかい大将？」
「すまんなアルス。…こういう時には、理論ではなく、強引に引っ張る先導者が不可欠だ。どうにも私は表に立つには向かないらしいよ」
「ま、流石はあのボルカノおじさんの息子だけはあったわね！」

　アルスはアジテーターとして板に付いてきた！

「なぁ−にが！まだまだ［アジりずき］程度よアンタなんて！」
「でも…またアルスさん達に、命懸けの行動をさせてしまう事になってしまって…」
「まぁ、ああ言った手前、やらざるを得んでしょう。何、本隊が通る道には魔物一匹残しませんよ」
「ったく、やっぱり付き合わされる方はたまんないわね！（ニヤッ）」
「それにしても、隊の皆が、ああも不甲斐ない態度を取るとは思いませんでした…」
「なに、普通の人間ならあんな物ですよ。ダーマ神殿という、人の人生を左右する所を預かるなら、本来人間は弱いものだと言うことを、ゆめ忘れない事です」
「！…はい。（じーっ）」
「よし、じゃあ俺達は行こうか。ネリス、ザジも来るんだ」
「ゲ！アタシも行くの？！」
「当たり前だ。お前には俺の教えた必殺の霧氷幻凍流剣術があるだろう？」
「へ？と、当然、任せなさいよ！」
「じゃあ、お先に。…フーラルも行くぞ！」
「へいへい」
「さて…ん？何ですかなフォズ様？」
「えっ？あっ、そのっ…あ！そうです！鍵をお渡しするのを忘れてました！…ダーマの鍵です。これでダーマの扉は全て開くことが出来ます」
「おっと。では確かにお預かりしましたよ」
「…本当に、本当にすみません…巻き込まれただけのアルスさん達に、こんな…」
「忘れちゃったんですかフォズ様？」
「えっ？」
「俺達は友達でしょう？苦しいときに助け合うのは、友人として当然！な？（太陽のような笑顔）」
「あ…！は、はい、そうでしたね！…待っていて下さい、私もすぐに追いつきます！絶対絶対すぐに…！」
「では、道を綺麗に掃除してお待ちしてますよ」
「はい！…必ず行きます、アルスさんの所に…！(花のような微笑み、ちょっと涙)」

「綺麗に掃除ね。魔物の死体で満ちあふれてるのが綺麗なのかしら？」
「…気にすんな、流れ出した血で美しいヴァージンロードが出来るかも」
「そんなん、完璧に魔界仕様じゃないの！」
「にしても、湯上がりでほんのり桜色のフォズ様、よかったのぅ」
「とてもフォズ様には見せられないヤニ下がり顔ねぇ…（バァカ、とっくに湯冷めしてるに決まってるじゃない、にっぶい奴ねぇ…大体、アルスさん［達］が消えてたわよ、［達］が）」