第１９話

甲斐です。


「街に流れてる〜時計〜台の鐘の〜音〜霧が晴れたなら〜」
「鐘があるのは時計台じゃなくて教会よ？」
「む！教会の鐘の音に祝福されなければ駄目なのか！頑張れそこの絶望カップル！」
「ありゃ、女々野郎確定でしょ…ううう、にしてもチカチカするわ…抽象芸術を町にしたりするから」
「そうかー？カッコイイ町だよなー！なぁアルス？」
「カッコイイもんですか！絶対ヘンよ！…ねぇアルス？」
「うむ…諸君！あえて言おう、変であると！」
「ええー！この良さが分からないなんて、脳味噌腐ってんじゃねーかアルス？！」
「ふふん…珍しく意見があったわね…さて、この変な町では何が起こるかしらね！行きましょう！（何気に軽やかな足取り）」
「なんか、機嫌いいな、アスカのヤツ」
「？？…自分の意見を押し通せたからじゃないか？」
「（はうう、アスカさん、あまりにも不憫ですぅぅ！）」

「…バロックって人の作った橋の開通式を、明日盛大にやるんだってさ。みんなお祭り気分で浮かれまくってるわよ」
「開通式か…くっくっく！」
「…と、きっと下品な想像をしてるヤツはほっといて（怒）…なんでも、バロックって人は有名な建築家で、独自のセンスのある前衛建築を次々うち立ててるらしいわね。で、更には頑固で偏屈でも有名だって」
「ゼポットといい、物作るヤツって、みんなそんなヤツなのか〜」
「そ、そんな事ないですぅ！主任さんは、とってもと〜っても！とっても…とって…も…えー、何と申しましょうか、そのー」
「町外れに塔を建てて、そこに住んでるって。なんでも、唯一友達と言えるクリーニって腕のいい医者がいるらしいわ。…平和ねー、魔王もここにはまだ来てないみたい。…するとこれから侵略が始まるのかしら」
「何を言う、既に始まっているぞ」
「えっ！？どこからそんなことが分かったのよアルス？！」
「今、まさに俺達の目の前に魔王様がいるじゃないか！なぁ魔王アスカ様！」
「な！…うう…（じわ）なによなによ！バカアルスーっ！（だだっ）」
「えっ？！あ、あれっ？！…おーい、アスカさーん…あれれー？」
「なんか泣いてなかったか…？」
「予想外のリアクションに固まってる場合じゃないですよー！追いかけないと」

「痛たたた…」
「…転んだのか。ドジだなあ、アスカ」
「！…なにしにきたのよ！」
「ほれ。」
「な、なによ…？」
「クリーニって言う腕のいい医者がいるんだろ？…おぶってやるから行こう」
「ば…バカ言わないでよ！誰がそんな恥ずかしいまね…（ぐいっ）…きゃっ！？」
「問答無用だ！連れてくと言ったら連れていくのだ、はっはっは！」
「こ、こら！下ろせ！…もう！…（なによ、いつの間にこんなに背中広くなったのよコイツってば…）」
「はっはっは…（あああ、柔らかい暖かいイイ匂いしっとりすべすべ…）」
「はうぅぅ〜！良かったですぅ仲直りしたみたいで！…プレイヤーさんは、こういうお約束の照れ臭いシーンが大好物ですから〜」
「…なんか、考えてる事が食い違ってる気がするんだけどな…それに朝だったのに、何で夕焼け空になってんだ？！時間の流れ変だろ？！」
「そういう演出なんですよきっと〜お約束に突っ込んじゃいけませんよ〜」

クリーニ医院
「…さ、ベットに横になって…よしいい子だ、足を上げて…」
「あ…痛！…先生痛い…」
「すわ！ここで一足先に開通式がー？！…ぐええ！首を絞めるなアスカ〜！」
「ここは病院だよ、静かにしたまえ……よし、ＯＫだ。捻挫だな。２・３日入院して行くこと、いいね？」
「あ、でも宿屋のお仕事が！」
「エイミ！お前の仕事は一日も早く足を治すことだよ！まったくもう、明日の開通式でお客が一杯だって言うのに、こまった娘だよ…じゃ、先生頼みましたよ」
「ああ…さて、お次はそっちのお嬢さんだ…仲がいいのはイイが、おぶったままでは治療ができんよ？」
「え、あ、はっはっは！（汗）よっ…と…ほれ」
「もう！アンタのせいで余計な恥かいちゃったじゃないの…」
「…なぁマルチ、なにもおぶって来ないでも、ベホマとかで治せば良かったんじゃねーのか？」
「…そしたら美しくないんですぅ…それに、そんなこと言ったらアルスさんきっと、あの場でハッスルダンス踊りましたよ…？」
「…見たくねーな、その後の惨状は…」
「じゃ、エイミは入院だ。奥のベットへ移さないと…おーい」
「分かりましたぴょ〜！さあ、エイミさん移動しますぴょ！」
「…メイド服のナース？？…それともアレがナース服？」
「これは黒いナース服ですぴょ！」
「あの〜、貴方達は旅の方ですか？…もしそうなら、是非ウチの宿に泊まっていって下さいね！…私はお世話できないですけど…あーあ、私ってホントドジで…お皿は割るわ、布団は破るわ、階段から落ちるわ」
「わっ！わかりますぅぅその気持ちぃぃ！はうう〜」
「エイミなら、怪我をするのは手の筈なんだがなぁ…まあそうだな、今日はアスカもああだし、泊まって行く事にするよ、エイミちゃん様」
「わ、私、そんな様を付けられるような人間じゃないですよ？！」
「まあ、気にするな。よし行くぞ、詠美ちゃん様が下働きしている猪ノ坊旅館へ！」
「うーわ、何でかしらないけど、ちょおむかって感じぃ…」