第２１話

甲斐ですー


「ハーブあるよハーブあるよ〜」
「はうー、出来たてのメモリアリーフですぅ」
「…こんなトコに繋がってやがったのか…グリンフレークは…カヤさんが…」
「ぴぎー！」
「うごっ！？」
「こら、ビッキー！ごめんねお兄ちゃん、痛かった？」
「いや平気さ、野咲すみれちゃん」
「私の名前はリンダだよー！（ぷー）」
「こらリンダ！すみません、娘が…あ、貴方達は」
「ぺぺかお前？…ほぉう、娘のリンダね…」

「…あのリンダって娘は、養女なんだって。…なんでも土砂降りの雨の中で拾ったらしいんだけど」
「土砂降りの雨の中で？…実は［秩序守護者］だとか」
「オメーは確実に、［律法を破る者］だなぁ…」
「まぁ、何にせよ、そういう美談には裏がある物さね」
「こ、こら、それはアタシが言うセリフじゃないの！返せ！」
「ん、返してやろうか？…口移しで（にっこり）」
「まぁステキ！お礼にもうどくのきりを吹き込んで上げるネ☆（にっこり）」
「毒はいやぁぁぁ…カヤさんが…カヤさんが」
「…で、本物のリンダはどうなったのかしら？」
「よし、グリンフレークに行ってみるか…」

　　アルス達は、ぺぺのイベントを片づけて、グリンフレークへ向かった！

「あっ…酷い、私のイベントを…」
「どういうイベントかというと、アスカ曰く」
「ぺぺの古傷に、塩を擦り込んでヤスリでこする様な結果になったわね…」
「という事だ」

グリンフレーク
「…カヤ奥様…（くらあっ）」
「うーん…この３０年の間に何があったか、想像もしたくないわね〜」
「滅べ滅べ、こんな街滅んでしまえ」
「イワンのバカもすっかり駄目人間だし…屋敷に行ってみる？」
「裏口からね…」

「駄目よチェリ、奥様の失敗料理は捨てないと大目玉だよ？」
「いいじゃない、どうせ捨てちゃうんだからさ！コパンにも残飯以外の物食べさせて上げたいの、ね、ね、見逃して！…ううん、見逃せなんて言わない、協力して！」
「こいつう…うーん、そーね、休暇２回で手を打ちましょうか！」
「うう…足下見てぇ…わかったわよ、もう！」
「よしよし、チェリはいいこだねー（笑）…さ、持ってってあげなよ」
「…（ほうっ）…なんかいいなあ、あのメイドさんコンビ〜」
「あのねーちゃん、動物に優しいな！オイラ気に入ったぞ！」
「コパーン！おっひるだよー！」
「わんわんわんっ！」
「そーら、奥様の手料理なんて、人間の私だって食べられないごちそうだぞー」
「はっ、はっ、はっ（もぎゅもぎゅ）」
「…こんにちはお嬢さん、可愛い犬ですね」
「あ、ハーブ園に御用の方ですか？それなら…」
「きゅーん…（ばたっ…ぶくぶくぶく）」
「えっ？！コパン！どうしたの？！コパンってば…うわーん！コパンがー！」
「ぬうぅ、まずい、こりゃ毒だ！えい、間に合えよ、キアリー！」
「は、は、は…（ぴくぴく）」
「コパンがー、コパンが死んじゃうよ〜」
「どうしたチェリ？！…おお、コパン？！…急いで小屋の方に！」
「キアリーをかけたが、イマイチだ…おいチェリ、泣いてないで手伝え」
「ひっくひっくコパンー」

「…毒ですねあれは…毒消し草と貴方の術で、もう大丈夫でしょうが…犬に毒を盛るなどという酷いことを誰が…」
「コパンには、捨てなきゃいけない、奥様の手料理をこっそりあげたんです…旦那様にお出しする料理に毒なんて…あ！もしや旦那様のご病気が良くならないのは、奥様が毒を盛ってるせい？…よぉし」
「どうする気だ？」
「奥様に、それとなく探りを入れてみます！…こんな酷いコトするなんて、絶対絶対許さないんだから！」
「…うう、やっぱり、カヤさん毒使ってるんですね（げっそり）」
「ふん、そんなの考え無しに犬に餌をやるあの子が悪いんじゃないの…何よ、ちょっと可愛い子が相手だと鼻の下伸ばしちゃってさ」
「どーしたんですか、アスカさん？いつもなら、いの一番に怒ってるのに…」
「可哀想な老人とか、いたいけな子供とかならいいのよ。でも、可愛い女の子をアルスが助けてるの見てると、何故かイライラすんのよね…」
「ははぁ、それはジェラシーですねぇ！…特にあのチェリさんは、アルスさんのストライクゾーンのど真ん中に入ってますからねぇ」
「…ふーくーろーがーきーいーたーふーうーなー口を〜（ぐりぐりぐり）」
「あっあうー！ピースオブハートぉぉ〜！田沢さぁん」
「ふん、私がアルスを？…んな事あるワケないでしょーが！（ごりゅごりゅごりゅ）」
「あひぃぃ〜！頭蓋の装甲が割れます、割れちゃいますぅ！放して〜（泣）」

「あ、お客様…チェリと奥様が…私、とてもあの雰囲気には近づけません〜」
「おいおい…それとなく探るんじゃなかったのか…」
「…奥様、何故作ったお料理を、誰にも手を付けさせずに捨てちゃうんですか？…それに、旦那様の料理にだけは、一切人を近づけずに自分で味付けして…」
「何を言うんですか。味付けに失敗した料理など、恥ずかしくて他人になど見せられる訳が無いでしょう。それに、あの人に食べてもらう料理は、私が作りたいのです…若い頃は私も貴方と同じメイドで、屋敷の料理を切り盛りしていたものよ…料理を美味しくするスパイスとは何か分かりますか、チェリ？」
「え、えーと…」
「ふふっ、それは［愛情］ですよ。愛する人に食べてもらう…愛する人が作ってくれた…そんな想いが料理を何倍にも美味しくするのです！…貴方にはそんな相手がいないのですか？」
「あ、あうーあうー」
「…ジャブ失敗どころか、カウンターにブラジリアンハイキックをもらってるぞ…」
「百戦錬磨のカヤと、あんな馬鹿正直そうなチェリじゃ勝負になんないわよ」
「あうー…じゃあ聞きますけど奥様！料理に毒を入れましたね！！」
「まあ！なんてこと言うの貴方は！」
「…いきなりフルスイングのハンマーパンチだな、おい…」
「コパンが、奥様の料理を食べて、泡を吹いて倒れたんです！ボルタさんが、毒だって…これはどう言う事ですか、説明して下さい！」
「ふう…いいことチェリ？人間が食べるなら美味しくても、他の生き物には毒になるという物もあるのですよ？猫にアワビとか…犬の食べた食材を調べましたか？」
「えっ、いえ、その…」
「まったくそそっかしいったら…それにしても、私の言いつけを守らずに、犬に食べさせるとは…貴方が優しい娘なのは分かりますが……お仕置きが必要ですね…
　（キラーン！）」
「ひうっ…お、奥様、目が光りましたね、目が！あうぅ…」
「おおう、女主人がメイドにお仕置き！吊るのか？！置くのか？！垂らすのか？！地下室にマチョーな男が並んでいるのか？！」
「貴方には、向こう３週間、館の床拭きを全部雑巾でやって貰います…いいわね？チェリ。」
「はい、奥様…（しゅーん）」
「あーあ、ザマ無いわねぇ…でも、私は毒と言われた時のカヤの目を、見逃しちゃいないわよ…ありゃ、確実に黒ね」

「あうーあうー…こ、腰が…」
「なんだ…こんな屋根裏までやってるのか？」
「あ、アルスさん…自業自得とは言え、とほほ〜でたはは〜な状態です…」
「まだ、カヤのことを疑ってるのか？」
「奥様には、色々と黒い噂があるんです…でも、私なんかじゃとてもとても…」
「実はな、カヤが下町で、前の主人のイワンに会っていた…昔から愛し合ってた二人だが、まだ続いてたんだな」
「そんな！奥様は旦那様を愛しているんじゃ…」
「…そして、これはカヤが大事にしていた小瓶だ。…中身は…遅効性の毒。使い続ければ、病死と区別がつかないってやつだ」
「！（小瓶を奪って猛速ダッシュ！）」
「ぐわっ！ま、まてオイ！」

「ふう、今日もカヤの愛情料理をいただくとするかの」
「旦那様ーっ！」
「なんですチェリ！なんとまぁはしたないコト！」
「…おや、お客人、どうかね、カヤの料理を一緒に？」
「「「いえ結構。（どキッパリ）」」」
「旦那様、その料理には、ど、毒が！…この奥様の小瓶こそ、動かぬ証拠！」
「な、なんじゃと！？…カヤ、どういうコトじゃ？！」
「…もう止めにしよう、カヤ。…もういいんだ」
「イワン？！貴様何しに来おった！」
「カヤに毒を盛らせてアンタを殺そうとしたのは、オレだったのさ…」

「…結局、カヤとイワン、出て行っちゃったわね…イワンの息子と旦那様は…」
「コレで満足ですか堀井さんっ？！どーすか？！…やはりこの街は…む？」
「あははーっ！こ、こらコパン！そんなトコ舐めたらダメだってば！あははっ！」
「…うぬぅ、犬め…っ！はっ、オルフィーの街での着ぐるみを着れば！」
「人間大の青い豚と戯れたがる娘さんはいないと思うけど…」
「あっ、みなさん！おかげで、街から悪を追放することが出来ました！ぶいっ！」
「ま、この街も、チェリがいたのが救いだったか。…なぁチェリ、こんな街出て、俺らと来ないか？」
「はうっ！？ア、アルスさん、やはりこのマルチではお役不足ですかー？！（泣）」
「いや…そういう事ではなくてだな…」
「あんた、こんな普通の娘つれて歩けるわけないでしょ。家に置くって訳でもなし」
「…グランエスタード預かりとか…」
「あんなん、ここより雰囲気悪いやんか、今？！」
「ほ、ほら、チェリみたいのがいれば、リーサ姫も元気になるかなー…なんて…」
「コラーッ！バカチェリ、仕事さぼって何やっとんじゃーっ！！」
「うわっ！まっず〜…でわ、みなさん私は仕事に戻りまっす！（びしっ！）…私、結構この街気に入ってるんですよ。それに、コパンをおいては行けませんし。…コパンおとなしくしてるんだよー？今度は、チェリさん特製の愛情料理を食べさせてあげるからねー！…それじゃお元気で〜」
「…犬でいいの、相手？」
「コパン…貴様、青輝丸だったのか…」
「わふ？」