第２９話


マルチ 「こんにちわマルチです。皆様、いかがお過ごしでしょうか。私たちは今、戦乱の風今まさに吹かんとしているプロビナ村に来ています」
アスカ 「何でも、ラグラーズって国が、この村の至宝［金の女神像］を狙って攻めてくるらしいんだけど…」
ガボ　 「なんか、魔物を寄せ付けないすげーパワーを秘めた像らしいぞ」
アルス 「うううむ、金目像か？いかにもパチモン臭い感じだなぁ」
メルビ 「山の上にいる神父殿が持ってきた、ありがたい像という話でござる。…その神父殿も、かなり立派な人物と、村人に慕われておるようでござるな」
マルチ 「それで、村長のオルドーさんと、ご子息のラズエルさんの意見が対立しているんですぅ」
アスカ 「…大体状況は、こんな所ね。わかった？アルス？」
アルス 「はっはっは、村長の名前すっかり忘れてて、ネットで検索しちゃったよ！…ああっ！頭が混乱してなんだかわからないっ！」
ガボ　 「…大丈夫そうだな。」
メルビ 「さて、では、山の上の教会とやらに行ってみるでござる」

　　山の上の教会

シスタ 「まあ、旅のお方ですか？こんな時でなければ、ちゃんとしたおもてなしも出来るのですけど…今、神父様は村長さん達と話し合いの最中で…（バターン！）…あらっ？　今のはラズエル様？…女神像を持っていたような…神父様〜？」
神父　 「何と言うことだ…ラズエル君、早まったことをしなければよいが…」
アルス 「失礼、神父殿。お困りですかな？」
神父　 「…貴方達は？」
アルス 「ええ、まぁ…私たちは、魔物退治などのトラブルシューティングを生業に旅を続けている者ですが、この村で、件の女神像の話を聞きまして、一目見ようと来たのですけども…どうやらそれどころでもないようですな」
神父　 「…はい…あの女神像は、聖なる結界を周囲に張り巡らせて、魔物の進入を防ぐ…要は、光の魔法陣付きトヘロスの様な効果を持っているのです…それで、プロビナ村は、魔物に脅えることもなく暮らしていたのですが、隣国のラグラース王が像を渡さなくては村を攻め滅ぼすと脅してきたのです…」
アルス 「なるほど、フォズ様の使った結界と同じ物か…」
アスカ 「確かにね〜、そんな強力なお宝なら、私だって欲しいもの。でも、権力武力を笠に着て我を通そうなんてサイテーね！」
神父　 「私は数年前、重傷を負い、記憶を失っていた所を、この村の人たちに救われました。その時に持っていた唯一の品が、あの女神像なのです。人々を護るための像が、人々の争いの種になるとは…」
メルビ 「その像を持ち出したということは、ラズエル殿は…」
アルス 「どうする気か知らんが、早めに行った方が良さそうだな。」
神父　 「像を抱えては、そんな早く山は降りれないと思います。私はここを離れるわけにも行きませんので…無関係の旅の方にこんな事を頼むのは心苦しいですが、どうかお願いします！」
ガボ　 「まかしときなって、オイラの足ならすぐ追いつけっからよ！」
神父　 「お願いついでにもう一つ…オルドー殿も連れていって上げて下さい」
アスカ 「…いたのね、村長…」
オルド 「すまんのう…山の上り下りは最近辛くての」
アルス 「…村長連れてたら追いつけんぞ…マールーチー！」
マルチ 「ははっ！このマルチの出番ですね！…［不思議で愉快な大風呂敷（ファンファンクロス）］！（ぶわっ）」
オルド 『ふおおお？！な、なんじゃあああっ？！』
アルス 「いくぞ！」

　　プロビナ橋

兵士長 「…ほほう、女神像を持ってきたか…さあ、こちらによこせ」
ラズエ 「あんたらみたいのがいるから戦争が無くならないんだよ！…見ていろ！」
アルス 「……ん？…あそこ…ぬあっ！　やめれー！」
ラズエ 「砕け散ってしまえ、偽りの平和の象徴よ！（ドグシャーン！）」
兵士長 「め、女神像を砕いてしまうとは…な、何という…」
ラズエ 「はあっ、はあっ…どうだ！これでもう女神像は手に入らない！おとなしく国へ帰れ！」
兵士長 「何という…ふっふ…何という愚か者だ！ハーッハッハ！…者共！じゃまな女神像は最早無い！小癪な村を魔王様への供物とするのだ！行けぃ！」
魔物　 「キキーッ！」
ラズエ 「えっ？！な、なん…？！」
兵士長 「わかんねぇのか？…ラグラース兵なんて最初からいねぇ、女神像を排除するために芝居を打ったんだよ！まんまとかかりやがって、このバカが！ギャハハッ！」
メルビ 「いかんでござる！村へ戻るでござるよ！」
アルス 「ちいっ、ほら、オメーも来いラズエル！」

　　プロビナ村

ガボ　 「ガルルルルーッ！（ぐしゃっ）」
アスカ 「ちょ…きりがないわよ！」
アルス 「村人は、魂を抜かれてる…こんな所も、ダーマを思い出させやがる…」
ラズエ 「ぼ、ボクのせいで…ああっ！頭が混乱してどうしたらいいかわからないっ！」
アルス 「教会のシスター…と、神父は無事か？」
ラズエ 「そうだ！　神父様に！（ぴゅ〜っ！）」
アルス 「あ、おいっ！」

　　教会

神父　 「なんと村が！…そうですか、ならばすぐここにも魔物が来るでしょう…ラズエル君、皆さん、教会の地下倉庫にある箱を運び出して欲しいのですが」
ラズエ 「その箱に、逆転の秘策が？！わかりました！」
アルス 「…食料と水と…いったい箱ってどれだ？…おーい神父（ギィ〜、ガチャン）お、おいこら！　何をする！」
神父　 「…私、記憶を取り戻したんです…私の村も、魔物にやられ、私一人が生き延びました…そしてまた、ここでも私は人々を守れませんでした…せめて、貴方達だけでも生きて下さい！そこにいれば安全ですから！」
アスカ 「バカいってんじゃないわよっ！　そんな自己犠牲、今時はやんないのよ！　開けなさいよ！　全員で戦えば魔物なんて目じゃないっての！　これでも私達は歴戦なのよ！出せーっ！このバカ神父ーっ！」
神父　 「……さようなら、皆さん…」
メルビ 「行ってしまわれた…くうぅ、決戦を前に神に封印された時を思い出してしまうでござるよ！」
アルス 「ようし、アバカム！」
マルチ 「…ありませんよその呪文」
アルス 「ならば最後の鍵！」
マルチ 「まだ見つかって無いですぅ」
アルス 「リレミト！」
マルチ 「不思議な力でかき消されましたぁ〜（泣）」
アスカ 「アルスどいて！…アタシは、あーゆー自分が死んでも君は生きてみたいな考え方が大嫌いなのよ！　生きるんなら全員で生きなきゃ意味無いっての！　この、火拳のアスカ様をナメんじゃないわよ！…メ・ラ・ゾ・ォ・マッ！　でえりゃああああ！　豪熱ッ！　フィンガーフレアボムズゥゥッ！（ばぐどおおおぉんっ！！）」
ガボ　 「うぎゃーっ！」
メルビ 「狭い部屋でやる技じゃないでござるよ！！」
アスカ 「………こん畜生…キズ一つ付いてない…ホントに安全なトコね…」
メルビ 「…静かになったでござるな…上…」
アルス 「…そうだな」
アスカ 「…ねぇ…ここの扉って開かないじゃない？…私達、いつまでこうしてればいいと思う？」
アルス 「そりゃ、誰かが開けて…あ。」
アスカ 「…たぶん、あの神父さん、生きてないわ…シスター達も…ここ、結界張ってあるから、魔物も来ないし…誰が開けてくれるのよ…」
アルス 「…まいったね、どーにも」
アスカ 「…それに、ここ、トイレもないのよ…」
アルス 「…………まいったね、どーにも」
？？？ 「――仕様のない人たちですね、まったく。（ジジジッ…ごどん）」
ガボ　 「誰だっ？！」
マルチ 「あ、鍵が開いてますぅ！出られますよ！」
アルス 「助かったが…誰だったんだ？…ん？　鍵…熔けてる？」
ラズエ 「あああ、きょ、教会が…」
マルチ 「粉々ですぅ…」
アスカ 「…やっぱりいないわね…いい人ほど早死にするって、絶対間違ってるわよ…」
メルビ 「アルス殿！あちらに人が！」

　　　　　　　　　　　　　シスターは魂を抜かれて倒れている…
　　　　　　　　　　その胸には、しっかりと冒険の書が抱かれていた…

アスカ 「アルス、いたずらしちゃダメよ？」
アルス 「流石にこの状況でやらねーよ…このシスターは魂を抜かれているだけだから、まだ助かる…だが、一人いない…おのれ魔物め…またしてもシスターの命を…！」
アスカ 「とりあえず、このシスターを洞窟の中に移しておきましょうよ」

　　プロビナ村

ラズエ 「ああ…ああ…ボクが女神像を壊したばっかりに…ああ、ボクは…（はらり）」
マルチ 「ラズエルさん、何か落としましたよ！…これは…」

　　　　　　　　　それは、美しい女神が泉で傷を癒している絵であった…

アルス 「……ほう、春画か。」
アスカ 「んなワケあるかいっ！（ごずっ！）」
アルス 「おごっ？！」
ラズエ 「え？ああ…倉庫で見つけた…んん？女神…泉…傷を癒す？…これは…ああっ！頭が混乱してなんだかわからないっ！」
アスカ 「アルス、これって…」
アルス 「ああ、あからさまなヒントだな…あの神父、ここまで見越して、こんなリドルを残しておくとはな」

　　プロビナ橋

アルス 「あったあった、女神像。よいしょっと」

　　　　　　　　　　　アルスは［女神像の下半身］を手に入れた！

アルス 「後は、コイツを泉に浸ければいいんだろうな」

　　山道

アルス 「しかし、女神像が復活しても、村人達の魂を戻さないとなぁ…」
アスカ 「像が復活すれば、また魔物が来るわよ。そうしたら全殺しにしてやるわ」
マルチ 「あの〜、アルスさん…」
アルス 「なんだマルチ？」
マルチ 「この［女神像の下半身］なんですけど…［上半身］はいらないんでしょうか？」
アルス 「………おおっ！（ぽんっ）」

　　　　　　　なんとプレイヤーは、下半身を拾っただけで、山まで来てしまった！

ガボ　 「ギャハハッ！　フォズ様みたいな力を持った女神像の下半身だけ持ってくるなんて、実にオメーらしいなアルス！」
アルス 「何ッ？！　フォズ様の下半身？！…むむむむ…」
アスカ 「チェストォーッ！！（ずががん！）」

　　　　　　　　　アスカのまわしげりが、きゅうしょをちょくげき！

二人　 「ぐはああっ！」
アスカ 「おらおら、とっとと戻る、とっとと！！」
アルス 「うぬ…こんな橋の向こう側に落ちてるから、わかんなかったじゃないか…」

　　教会（跡地）

アルス 「ここだ、ここ、この泉に入れれば…」
りゅう 「…おっと、そいつはいけねーなぁ」
アスカ 「あ、あんたはっ！」
りゅう 「まだ人間が生き残ってたとは…しかも、女神像の復活なんてされちゃ大迷惑だぜ…ま、悪いが、さっくり死んでくれや」
メルビ 「ふふん、神の兵たる、この英雄メルビンに勝つつもりとは笑止な奴でござるな、隆喜平とやら！」
りゅう 「竜騎兵だバカヤロウ！！　一体ナニモンだソイツぁ？！」
ガボ　 「変換したら隆起兵になっちまったぞ」
マルチ 「はぁ…もっこりさんですか？」
りゅう 「…………も…もっこりさん？！」
アルス 「くっくっく！　さあ、死ぬのは貴様だ、モッコリ兵！！」
りゅう 「ヌガァァァッ！！　テメェらぁぁぁっ！　殺殺殺殺殺ッバギクロォォォスッ！！」
アスカ 「くっ…コイツ強いわよ？！　呪文の効きが悪いわ！」
アルス 「ちいっ…回復で手一杯だ…モッコリのくせに…そろそろＡＩ戦闘はマズイか？」
りゅう 「カァーッハッハ！　闇の力を受けた俺に、人間がかなうもんかよ！　トドメェッ！」
ラズエ 「…今だっ！！頼む、もう一度加護を与えてくれ女神像！（どぼぼん）」
りゅう 「し、しまった！…ん？　何も起きねえのか？」
アルス 「修復に時間がかかるのか…本格的にまずいか…」
？？？ 「（ごぼごぼ）――断裂面接続終了。魔力回復６０％…完全回復不可能と判断、現存魔力全解放！（コオォォ…）」
ラズエ 「？！　め、女神様の声なのか？！」
りゅう 「こ、この光は…？！　ぐ、ぐあああああ！　く、苦しい…力が…」
アルス 「！　今のウチだ、潰せっ！！」
りゅう 「ぐあぁぁぁっ！！」

　　　　りゅうき兵の力の源であった、人々の魂が解放されて体へと戻っていった…

アスカ 「…終わった…かしらね？」
アルス 「ああ…これで、あのシスター…と神父も眠れるだろうよ」
ラズエ 「め、女神像が…ああ、女神様、すみません…」
メルビ 「魔力を失って、ただの像になってしまったでござるな」

プロビナ村

オルド 「ありがとうございました…今回の事は、いい教訓になったと思っておきます。何事も、頼るばかりではいけませんな。教会も、村の者がみんなで直して、神父様のお心を忘れんようにしたいと思っとります…まあ、村はしばらく大変でしょうがの」
牛　　 『うわああ？！オラ牛の体にはいっちまっただか？！』
村人　 「うもぉ〜、うもも〜」
若者　 「こ、こら、そこはボクのウチだ、待て〜！」
ラズエ 「ああっ、魂がちゃんと入ってないのか？！　頭が混乱してよくわからないっ！」
アスカ 「…ホント、こりゃ大変そうだわね！」



セリオ 「…（ざばっ）――ふぅ。びしょ濡れになってしまいましたね…（ピッピッ）…主任…主任？」
長瀬　 『やぁセリオかい？…いや、誤魔化してないよ、本当にセリオ…まぁシンディ君落ち着いて…だからそれはだねぇ…』
セリオ 「――…やはりＰＳ版のシンディ宮内だったのですね」
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