第34話


アミッ「アスカ…うう…ア…」
アスカ「……パパ」
神父 「峠は越えたが、危険な状態には変わりない。…アミットさんが倒れた原因の一つは、心労によるものだ。アスカ、せめてアミットさんが回復するまではそばに付いていてやれ」
ロザリ「…あ、アルスさん達ですだよ」
神父 「おお、アルス達か、ちょっとこっちへ…」
アルス「……アミットさんの具合はどうですか?」
神父 「まぁ…アスカがそばに付いていれば持ち直すだろう。何と言っても、最愛の娘が危険な旅をしている、という事が一番の原因だったしな。」
メルビ「…返す言葉もないでござるよ」
神父 「アミットさんが倒れたのは、アスカが魔物に引き裂かれて死ぬ夢を見たショックでだそうだ。奥さんも同じ夢を見ていてな、夢とも思えないほど生々しかったそうでなぁ…」
3人 (ぎっくぅぅぅぅぅっ!!)
神父 「だから、アスカが帰ってきたときの喜びようといったらなかったぞ。…そこでだアルス。…まさかお前、この状況で、アスカを旅に連れ出そう、などとは言うまいな?」
アルス「…言えるわけはないだろ。アミットさんに元気になって貰いたいのは、俺だって同じだ。…悪ガキの俺を、自分の息子みたいに可愛がってくれた、もう一人の親父みたいな人なんだから…」
神父 「わかってるならいい。…アスカがいれば、アミットさんもすぐ快方に向かうだろうよ」


アルス「……まいったな、まさかこんな事になるとは」
ガボ 「アスカがいねーと、こっから先キビシーんじゃねーか?」
メルビ「拙者も魔法を頑張って学んでいるでござるが、まだまだアスカ殿のようにはいかないでござるよ」
アルス「…もし、アスカを連れてってアミットさんが儚くなったら責任の取りようがない。俺は、ドアをばたばた開けながら『パパー!私、勇者になったの!』『私頑張ったよ』『パパ、パパ、私を見て!』『お願い、私のパパを止めないでェーッ!!』…とかいうアスカを見るのは嫌だ」
アスカ「………んなことやんないっつーの。」
アルス「…アスカ、アミットさんはいいのか?」
アスカ「パパは今は落ち着いて寝てるわ。」
メルビ「それはよかったでござるな、一安心でござる」
アスカ「……でも、しばらくは私がついていてあげないとね…これ以上親不孝な娘になるわけにも行かないしさ…だからしばらくは旅…出来ないわね…」
アルス「……ああ。しっかり親孝行して、アミットさんを安心させてやれ」
アスカ「この機会に、一生分の親孝行を前払いしてあげるわよ!(にっ)…まぁ〜、この美少女アスカ様と旅が出来なくって淋しいでしょうけど、泣くんじゃないわよアルス?」
アルス「(真面目な顔で)…そうだな。……淋しくなるな………思えば、旅を始める前から、キーファと3人一緒にいるのが当たり前で……キーファは己の道を進むために、去っていっちまったし…」
アスカ「な、なにをいきなりシリアスに語ってんのよ…べ、別に私はいなくなるわけじゃないんだから…フィッシュベルに戻ってくればいつだって会えるじゃないの!(赤ぁっ)」
アルス「…いつでも一緒にいると…一緒にいるのが当然なんだと思ってた…今日、お前が残らなきゃならないって聞いたとき、アスカと離れるんだってわかったときに…いかにお前の存在が大きかったか気付いたんだ…」
アスカ「ア、アルス…」

アスカと視線を合わさずに、海を見つめながら静かに語るアルス…潮風が黒髪を揺らして通り抜けていく…
赤くなって困惑するアスカ…
斜め上の遠間から二人を映す画面の前をカモメが横切っていく


メルビ「ぬおっ?!拙者達、何故白黒になるでござるか?!」
マルチ「はぁ、蚊帳の外なんですねぇ…」

数瞬の間の沈黙…二人の影が伸びる船着き場に、潮騒とカモメの声だけが辺りに残る…

アスカ(な、な、なななな、何よ何よこの雰囲気ーっ!?(真っ赤)…ど、どうせアルスの事だもの、シリアスにしといて、一気にオチをつける気に違いないわ!そうに決まってるー!)

振り向き、いつになくシリアスな表情でアスカをまっすぐ見つめるアルス…

アスカ(さ、さあ、いつでもハズしてみせなさいよ!思いっきり蹴り飛ばしてやるから!さあさあ!(ドキドキ))

ゆっくりと、アスカの方に歩を進める…

アスカ(さ、さっさとハズしなさいよーっ!(ドキドキドキドキ))

そっとアスカの両肩に手を乗せる…

アスカ(あ、あ、あああ…(ドキドキドキドキドキドキ))

アルス「……アスカ」
アスカ「(だ、駄目ーっ!)だぁーーーーーっ!!(思い切り突き飛ばす)」
アルス「うはーっ?!(ドバッシャーーン!)」
アスカ「あ、あは、あはは、あのさほらさ、わた、私、パパの看病しないとさ、ああああアルスもボルカノさんとこにいくとかさ、マーディラスも復活してるかもだし、あ、そうだ、最近ダーマに行って無いじゃない!フォズ様に会ってきなさいよ!うん、それがいいに違いないってれら!じゃ、じゃあそんな感じでわかったんらながんばりんのよー!!(バタバタバタガチャバッターン!)」


ガボ 「……アスカの奴、やっぱ父ちゃんが心配でおかしくなったのか?」
マルチ「アルスさーん!だいじょぶですかーっ?!」
アルス「(びしょぬれで海から上がりつつ、微苦笑を浮かべて)…やれやれ」
メルビ「はっはっは、盛大に飛ばされたでござるなあ、アルス殿」
アルス「ふふっ…さて、それじゃ家帰ってからマーディラスにでも行ってみるか!」
ガボ 「うひょー!アルスの母ちゃんのうまい飯が食えるぞ!」
メルビ「…アスカ殿、大混乱でござったなあ…これは、次に会うときはときめき状態でござるかな」
マルチ「アルスさん…絶対鬼畜ですぅ、鬼畜王ですぅ、13人同時攻略の上に、次回作で交通事故で死んだりするですぅ〜」

一方そのころアスカさんは…
アスカ(何よ何よ何なのよーっ!なんでこんなにドキドキするのよーっ!!あんなあんなバカでスケベで性格の悪い…まぁ、ちょっとは格好良かったりも…あ゛ーっ!!何?私、もしかしてそうなの?!ってゆーかアルスも?!いやでも、フォズ様だって…んもーっ!何よこれ、ラブひな?!私の位置付け成瀬川なる?!…むきーっ!やっぱりあれもこれもそれも、コーナーポストが赤いのも全部全部全部アルスのせいよーーーッ!!)

アスカ「うがーっ!バカアルスーーーーーーッッ!!!」

……一人部屋の中で悶えまくるアスカさんでした。まる。


まえもどるつぎ